インターネットの普及により誰でも簡単に様々な情報にアクセスできる時代になりました。そんな中でいかに効率的に情報を収集し、質の良いアウトプットを生み出すかお悩みの方も多いと思います。
前回のコラム「第一回:リサーチ(調査)とは?-現代のビジネスパーソンに必須のスキル-」ではビジネスにおけるリサーチ(調査)の手法やデスクリサーチの長所や短所について詳しく解説してきました。
連載二回目の今回は具体的なデスクリサーチの進め方についてお話したいと思います。
ビジネスにおけるデスクリサーチとは?
ビジネスにおけるデスクリサーチは単純にインターネットや書籍、メディアなどから知見を得るということではありません。
皆さんの中にも上司や同僚から「〇〇について調べておいて!」と言われ、長時間かけたのに思うような情報が得られなかったことや情報が多すぎて処理できない、結局何が正しいのか分からなかったといった経験はないでしょうか?
実はデスクリサーチは単純に見えて複雑なのです。
こういった状況を回避するためにはデスクリサーチを「正しい」進め方で行う必要があります。
デスクリサーチの「正しい」進め方とは?
デスクリサーチを行う際には、実際のインターネットや書籍、メディア検索を始める前に以下の手順で準備を行う必要があります。順番に詳しく解説していきたいと思います。
デスクリサーチの準備プロセス
1.ゴールを設定する
デスクリサーチを始める上で、やみくもにキーワード検索をしている方は要注意です。
まずは一連の作業を通して「何を」知りたいのか?を考えてみましょう。
つまり、デスクリサーチのゴールを決めるのです。
例えば、「XX市場の動向についてまとめる」という目的でデスクリサーチを行う場合、単純に「XX 市場動向」とキーワード検索してしまいがちです。
しかしながら、これでは無数にある情報の中で迷子になり、当初予定していたよりも多くの時間を費やすことになります。
そこで、「XXの市場動向」について最低限、どのような事柄を知りたいのか・知る必要があるのか考えます。
これがこのデスクリサーチのゴールとなります。
デスクリサーチを行う背景や目的などによりその項目はケースバイケースですが市場動向に関して最低限以下の項目は知る必要があると考えます。
- 市場概況
- 市場規模
- 市場成長率
- 成長機会(ドライバー)や成長阻害要因
- 競合シェア、動向など
- 顧客
- 成長機会(ドライバー)や成長阻害要因
- 顧客ニーズ
- 顧客ペインポイント(悩み)
- アンメットニーズ(まだ満たされていない顧客の潜在的な要求・需要)
2.質問を定義する
デスクリサーチのゴールを設定してもまだ、インターネットや書籍、メディア検索には移行しません。
次は、どのようにして①で設定したゴールを達成するのかを考えていきます。
このゴールを達成するためにどのような事柄をカバーするのか、項目(質問)出しをします。
その際に調べる項目(質問)を必須項目であるMust haveとプラスα項目のGood to haveに分類することで優先順位をつけていきます。
Must have(必須項目)ではデスクリサーチのゴール達成に欠かせない質問項目を指します。
例としてはシェアの大きい競合はどこか?や最も成長を遂げている企業はどこか?最も売り上げの高い販売経路は何か?などです。
一方で、Good to have(プラスα項目)ではMust haveよりも優先度は低いがこれらの情報があるとアウトプットがより豊かになるという質問項目が該当します。
例えば、ニッチな企業はどこか?や新規参入の有無そしてこれまでにない画期的もしくはユニークな販売経路は?などが挙げられます。
質問項目の分類
Must have (必須項目) |
デスクリサーチのゴールを達成するために欠かせない重要な項目 |
|
Good to have (プラスα項目) |
カバーしなくても大まかな情報は確認できるが、これらの情報があるとアウトプットがより豊かになるという項目 |
|
3.仮説を立てる
ゴールを設定し質問項目出しを行なった後は仮説を立てます。
この作業はデスクリサーチを始める前、もしくは初期の段階で行います。
まずはデスクリサーチを始める前の段階で自分の持っている知識を使い、「〇〇ではないだろうか?」という仮説を書き出してください。
デスクリサーチを行うトピックに関して事前の知識がない場合は、デスクリサーチ初期段階(1時間程度かけて基礎情報を収集した後)でも構いません。
これらの仮説はデスクリサーチを進めていく上で検証を行います。
その際、事実と異なっていることは多々ありますが問題ありません。
重要なのは仮説を持ってデスクリサーチを行い検証・修正・補完というプロセスを経て結論を導き出すということです。
そのため、常に自分のたてた仮説を常に疑い、様々な情報を柔軟に受け入れる必要があります。
仮説を用いたデスクリサーチ
デスクリサーチの質は「前準備」で決まる
ここまで読んでいただいた方はお気づきだと思いますが、デスクリサーチを始める前の準備こそがアウトプットの質を高める成功の鍵と言えます。
しかしながら、時間に追われている焦りからすぐに検索画面を開いてデスクリサーチに移ってしまうことも多いと思います。
こうした行動は結果的に作業の時間を長引かせてしまったり、思うようなアウトプットに繋がらないなどの事態を引き起こしてしまいます。
そうならないためにも、正しい手順を踏んでデスクリサーチの結果を最大化してください。
連載二回目の今回はデスクリサーチの効果的な進め方について焦点を当てました。
次に課題となるのはどのようにして質の高い情報を収集するのかだと思います。
情報が溢れかえる現代社会ではSNSやブログなどを使えば誰もが情報の発信者となれます。
同時に、いかに信頼のできる情報源に出会えるのか、ひいてはどのように質の悪い情報・データをスクリーニング(ふるいにかける)するかということが質の高いアウトプットへと繋がります。
私も実際に参考にしているウェブサイトや文献、そして情報を選別するコツなどをご紹介していきたいと思います。
▼連載
第一回:リサーチ(調査)とは?-現代のビジネスパーソンに必須のスキル-
第三回:保存版!デスクリサーチの質を左右するソース(情報源)集
第四回:実践編!デスクリサーチにおける現役コンサルタントの思考プロセスを大公開