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第四回:実践編!デスクリサーチにおける現役コンサルタントの思考プロセスを大公開

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第四回:実践編!デスクリサーチにおける現役コンサルタントの思考プロセスを大公開

イントロダクション

これまでお役立ち記事の連載を通してデスクリサーチについて解説してきました。
連載第一回目では「第一回:リサーチ(調査)とは?-現代のビジネスパーソンに必須のスキル-」と題して、インターネットや文献を活用する二次情報を用いた情報収集の基本について解説しました。

また、連載二回目にあたる「第二回:デスクリサーチの正しい進め方とは?-事前準備がポイント!-」ではこれまでデスクリサーチを仕事で使っている人にも改めて読んでいただきたいリサーチの具体的な進め方やコツをご紹介しました。

そして、第三回「第三回:保存版!デスクリサーチの質を左右するソース(情報源)集」では、質の高い情報を収集するためのソース(情報源)に焦点を当ててきました。

デスクリサーチを行う上でいかに質の良い情報源に出会えるかがリサーチの成功の鍵を握ります。
いずれもまだ読んでいない方はぜひ、参考にしてみてください。

さて、これまで記事を読んでくださった皆さんは「リサーチの流れや手法はおおよそ分かったけれど、実際に自分で行う時にイメージが湧かない!」と感じられている方も多いのではないでしょうか?

今回の記事では私が執筆しグローバル・カルテットで公開している「処方薬宅配市場 2022 年版―異業種からの参入続々と」というビジネスレポート作成時にどのようなプロセスを経てデスクリサーチを行い、効率的・効果的な情報収集を行なったのかをご紹介いたします。

具体的にどのような手順や思考プロセスでリサーチを行なったのか実際の例を交えて解説することで、よりデスクリサーチに関する理解を深め、ご自身でも実践していただけるようにとの思いからです。

なお、レポートのあらすじは以下に載せております。
本ページでは、レポートの図解も公開しておりますので、ページ下部にあるフォームよりダウンロードの上、ぜひ読んでみてください。


「処方薬宅配市場 2022 年版―異業種からの参入続々と」あらすじ

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、これまで対面が主流だった処方薬の受け渡しにも変化が起きている。
オンライン診療・服薬指導の解禁や規制緩和に伴い患者宅に処方薬を配送する動きが広がっているほか非接触で受け渡しを行えるようコンビニや駅のロッカー を活用する事例なども見られるようになった。

グローバル・カルテットより2020年11月に発行したレポート「処方薬宅配市場の動向と展望」では規制緩和直後の処方薬宅配市場について調査、報告した。
今回はその後、どのように市場が変化したのか、諸外国との比較や日本市場に新たに参入した企業など最新の情報を踏まえて処方薬宅配市場の展望を考察する。

処方薬宅配サービスとは_図解資料

出典:「処方薬宅配市場2022年版―異業種からの参入続々と」図解

具体的なデスクリサーチの進め方

以前の記事でもご紹介しましたが、デスクリサーチを行う際には、実際のインターネットや書籍、メディア検索を始める前に以下の手順で前準備を行う必要があります。
それぞれのステップに関して順番に詳しく解説していきたいと思います。

ゴール設定_質問の定義_仮説_デスクリサーチ

 

1.ゴール設定

まず、やみくもにキーワード検索をせずにまずは一連の作業を通して「何を」知りたいのか?を考えデスクリサーチのゴールを決めます。

例えば、今回のように「(処方薬が自宅に届くサービスの)処方薬宅配市場動向についてまとめる」という目的でデスクリサーチを行う場合、単純に「処方薬宅配 市場動向」とキーワード検索してしまいがちです。
しかしながら、これでは無数にある情報の中で迷子になり、リサーチ作業に多くの時間を費やすことになります。

そこで、「処方薬宅配の市場動向」について最低限、どのような事柄を知りたいのか・知る必要があるのか考えます。
これがこのデスクリサーチのゴールとなります。

リサーチのゴールとしては以下の項目を最低限カバーするべくリサーチ前に設定しました。
これらの項目は今回のようなレポート作成のみならず一般的な市場リサーチにも当てはまりますので、これから業務でデスクリサーチを行う方はぜひ取り入れてみてください。

市場概況

  • 市場規模や市場成長率:市場規模や今後の成長率予測に関してはデスクリサーチ完了後にレポート作成をする際のスタンス(今後成長が期待される市場なのか、それとも課題が多い市場なのかなど)を決める大切な情報
  • 競合と市場占有率:処方薬宅配市場は比較的新しい市場のため、各社の市場占有率などデータが数ない
    *インターネットや書籍文献など二次調査で情報が得られない場合は、有識者などへのインタビュー(一次調査)が有効な場合もある
  • 市場成長促進要因:処方薬宅配サービスを後押しする事柄(コロナ禍における非接触サービスの拡大、法制度の整備が進むなど)
  • 市場成長阻害要因:処方薬宅配サービス拡大の障害となる事柄(医療の質担保への疑念、運用コストなど)

 

顧客(消費者・患者)

  • 顧客ニーズ:患者さんやご家族の「あったらいいな(需要)」はどんなことか
  • 顧客ペインポイント:通院、処方薬に関して患者さんやご家族が困っていること
  • アンメットニーズ:まだ満たされていない顧客の潜在的な要求・需要はあるか?患者さんだけでなく治療を行う医師、薬の管理をする薬剤師のニーズは?

2. 質問の定義

デスクリサーチのゴールを設定した後は、どのようにして①で設定したゴールを達成するのかを考えていきます。このゴールを達成するためにどのような事柄をカバーするのか、項目(質問)出しをします。

  • Must have(必須項目)ではデスクリサーチのゴール達成に欠かせない質問項目を指します。
  • 一方で、Good to have(プラスα項目)ではMust haveよりも優先度は低いがこれらの情報があるとアウトプットがより豊かになるという質問項目が該当します。

質問項目の分類

Must have (必須項目)

デスクリサーチのゴールを達成するために欠かせない重要な項目

Good to have (プラスα項目)

これらの情報があるとアウトプットがより豊かになるという項目

市場規模・成長率 処方薬宅配市場規模と短期(3−5年)および中長期(5-10年)成長予測 諸外国の処方薬宅配市場規模および成長率
競合環境 市場占有率の高い(売り上げ)企業 新規参入企業やこれまでに例のない画期的なサービスを提供する企業
市場成長促進要因 処方薬宅配市場の成長に大きく関連する事柄(例:法令・規制改正、補助金や助成金の導入、大手企業の市場参入など) 処方薬宅配市場の成長に関連する事柄(例:イノベーション、異業種の参入など)
市場成長阻害要因 処方薬宅配市場の成長を大きく妨げる事柄(例:法令・規制改正、補助金や助成金の打ち切りなど) 処方薬宅配市場の成長を妨げる事柄(例:処方薬宅配に必要なデジタルツールの使いこなしが難しいなど)
顧客ニーズ 処方薬宅配サービスを利用したいと思う動機(例:新型コロナによる生活様式の変化など) 処方薬宅配サービスを利用したいと思う動機(例:(すでに市場が形成されている)諸外国での顧客ニーズなど)
顧客ペインポイント 想定顧客の悩みの種(例:日常生活において最も困っている、解決したい事柄など) 想定顧客の悩みの種(例:日常生活において解決できるとより豊かな生活が送れる事柄など)

 

3. 仮説を立てる

ゴールを設定し質問項目出しを行なった後は仮説を立てます。
この作業はデスクリサーチを始める前、もしくは初期の段階で行います。

まずはデスクリサーチを始める前の段階で自分の持っている知識を使い、「〇〇ではないだろうか?」という仮説を書き出してください。
実際の例としては以下の通りとなります。

①市場概況

  • 市場規模や市場成長率: オンライン診療やオンライン服薬指導との一連の流れに処方薬宅配があるため、市場規模や今後の成長率はそれらのサービスと連動しているのではないか?
  • 競合と市場占有率:これまで処方薬の主な受け取り場所であった大手ドラッグストアや薬局チェーンが市場を占有しているのではないか?
  • 市場成長促進要因:フードデリバリーをはじめコロナ禍における非接触サービスの拡大にあるため、この市場もコロナ禍で大きく拡大したのではないか?
  • 市場成長阻害要因:オンラインを介したサービスには懐疑的な消費者も多い日本でどの程度受け入れられるのだろうか?=受け入れられにくいのではないか?

②顧客(消費者・患者)

  • 顧客ニーズ:高齢者、自宅での生活は問題ないが通院が難しい状態にある患者、忙しい社会人、介護・子育てに従事する人などは自宅にいながら処方薬を受け取れるメリットを享受できるのではないか?
  • 顧客ペインポイント(悩みの種): 仕事や子育て、介護などで薬を受け取りに行っている時間がない人は多いのではないか?高齢者などは通院が困難なことがある、通院を忘れてしまうことがあるのではないか?
  • アンメットニーズ:これまで通院や薬の受け取りが難しく治療がおろそかになる、断念したケースも処方薬宅配で解消できないか?=治療アウトカム(結果)の向上

重要なのは仮説を持ってデスクリサーチを行い検証・修正・補完というプロセス(下記の図参考)を経て結論を導き出すということです。
そのため、常に自分のたてた仮説を常に疑い、様々な情報を柔軟に受け入れる必要があります。

仮説を用いたデスクリサーチ

まとめ

みなさんいかがでしたか?繰り返しになりますが、デスクリサーチを始める際はまず入念な前準備が必要です。
必ずデスクリサーチのゴールを事前に決めておきましょう。
こうすることで様々な情報の中で本当に自分が必要な情報を効率よく収集することができます。

また、ゴールを決めた後はそれらのゴール達成のためにどのような情報が必要なのかを優先順位をつけて決めていきます。
こうすることでゴール達成のためのロードマップ(目標達成までの道筋)が明確になります。

そしてデスクリサーチの初期段階では仮説を持って情報収集に臨んでください。
自分の立てた仮説が結果的に間違っていても問題ありません。
大切なのは「OOではないだろうか?」と考えながらリサーチを行うことで、自分の立てたゴールから大きく外れることなく情報収集を進めていくことができます。

今回、事例として取り上げた「処方薬宅配市場 2022 年版―異業種からの参入続々と」はレポートの他に図解も公開しております。
下記フォームよりダウンロードの上、ぜひご覧ください。

「処方薬宅配市場 2022 年版―異業種からの参入続々と」図解 ダウンロード

処方薬宅配市場2022_図解表紙

 

▼連載
第一回:リサーチ(調査)とは?-現代のビジネスパーソンに必須のスキル-
第二回:デスクリサーチの正しい進め方とは?-事前準備がポイント!-
第三回:保存版!デスクリサーチの質を左右するソース(情報源)集

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